心臓弁のしくみと働き

心臓弁のしくみと働き

心臓は全身に血液とともに酸素を供給する、ポンプのような役割をしています。
心臓の内部は右心房・右心室・左心房・左心室の4つの部屋に分かれています。各部屋には「大動脈弁」「僧帽弁」「三尖弁」「肺動脈弁」と呼ばれる弁があります。心臓弁は血液が常に一方向に流れるように維持し、逆流を防止します。

心臓弁膜症ってどんな病気?

心臓弁膜症ってどんな病気?

心臓弁膜症は、弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった状態をいいます。
主に、弁の開きが不完全なため血液の流れが妨げられる狭窄症と、弁の閉じ方が不完全なため血液が逆流してしまう閉鎖不全に分類されます。

代表的な心臓弁膜症

心臓弁膜症はどの弁でも起こりますが、97%が「大動脈弁」と「僧帽弁」の異常から由来すると言われています。

心臓弁膜症の例

狭窄 閉鎖不全(逆流)
大動脈弁
大動脈弁狭窄症
弁の開きが悪くなり、心臓から十分な血液を送り出すことができなくなるため、左心室の内圧が高くなり、心筋は肥大し、働きが低下する
大動脈弁閉鎖不全症
弁の閉じ方が不完全なために、大動脈から左心室への逆流が生じる
僧帽弁
僧帽弁狭窄症
弁の開きが不十分なため、左心房から左心室への血流が妨げられ、左心房に血液がたまり、血栓ができやすくなる
僧帽弁閉鎖不全症
弁が完全に閉じないため、左心室から左心房へ血液が逆流する

加齢とともに増える弁膜症

心臓弁膜症の原因

心臓弁膜症の原因には、先天性と後天性のものがあります。特に近年では、加齢に伴う弁の変性や石灰化による心臓弁膜症が、高齢化の進行とともに増えています。

心臓弁膜症の有病率

心臓弁膜症の有病率は、年齢とともに上がる傾向にあります。日本の総人口において、65~74歳で約148万人、75歳以上で約235万人の潜在患者がいると推測されます。

心臓弁膜症の有病率グラフ

典型的な症状

心臓弁膜症には特有の症状は少なく、加齢に伴う体の変化と似ています。そのため「年だから」と病気を見落としがちです。

典型的な症状

  • 息切れ
  • 胸の痛み
  • 足のむくみ
  • ドキドキする
  • 体がだるい
  • 疲れやすい
  • 気を失う

「症状はない」って本当?

普段座る時間が長い、もしくは無意識に日常生活の行動に制限を加えている場合、症状があっても、自覚していない可能性があります。

症状に気づきにくい原因

  • 無意識に日常生活の運動量を減らしている場合
  • 加齢に伴う体の変化と混同している場合

心臓弁膜症は心不全の原因の一つです

心不全とは

心臓の働きが低下し、心臓に負担がかかった状態です。心不全は慢性心不全と急性心不全に分類され、慢性心不全患者は、心不全の増悪による再入院を繰り返しながら、身体機能が悪化する悪循環が特徴です。

心不全は、心臓弁膜症や心筋梗塞など様々な病気が引き起こすポンプ障害の結果として息苦しさやむくみが出る状態を指します。心臓の病気を早期に発見し、重症化する前に適切なタイミングで治療することが、心不全の予防や増悪の防止において大切です。

心不全とは 心不全とは②

検査・診断方法

症状の出始めを見逃さずに「ちょっとしんどいな」と思ったら、早めに医師にご相談ください。聴診、もしくは健康診断で心雑音が指摘されたら、循環器専門の先生に心エコー図検査をしてもらいましょう。

聴診

聴診

聴診は問診とともに心臓弁膜症を発見するための第一歩です。聴診し、心臓弁膜症に特有の心雑音が聴こえた場合は、心エコー図検査を受けることが必要です。

心エコー図検査(超音波検査)

心エコー図検査(超音波検査)

超音波で悪くなっている弁を特定し、その動きや狭窄・逆流の度合いなどをより的確に把握します。検査は痛みを伴わず30分程度で終わることが多いです。心臓弁膜症の診断をされたら、定期的に心エコー図検査で重症度の変化を把握することが大切です。

主な治療方法

心臓弁膜症は自然に治ることはありません。
患者さんの状態によって、薬で症状を緩和し経過観察を行う「保存的治療」や「手術療法」が選択されます。

保存的治療

内服薬で症状を抑えることができますが、病気の進行を止めることはできません。

開胸手術(弁置換術*1又は弁形成術*2)

開胸手術(弁置換術*1又は弁形成術*2)

胸を開いて、一時的に心臓と肺の機能を代行する人工心肺装置を用い、心臓を切開して弁の機能を回復させます。

  • *1 弁置換術:患者さんの悪くなった弁を取り除き、生体弁もしくは機械弁に取り換える手術です。
  • *2 弁形成術:人口弁輪などを用いて、患者さん自身の弁やその周囲の形を整え、弁の機能を回復させる手術です。

カテーテル治療

太ももの付け根などの血管からカテーテル(細い管)を使って、人工弁を心臓まで運び、留置する手術です。

カテーテル治療

このような体の変化はありませんか?

半年前と比べて、下記のような変化がないかをチェックしてみましょう。

  • 階段を2階まで上がった際にドキドキが増えていませんか?
  • 今まで大丈夫だった距離でも歩くと息が切れていませんか?
  • 靴下の跡が強く残るようになっていませんか?
  • 休んでも疲れを感じる時が増えていませんか?

医師にご相談ください

以下に当てはまるものがありましたら、気軽に当院へご相談ください。

  • 上の症状リストに心当たりがある
  • 健診などで心雑音が指摘された