不整脈とは

不整脈イメージ

不整脈とは心臓の動きのリズムや速さに異常が起き、脈が乱れた状態です。不整脈には様々なタイプがあり、症状の現れ方も多彩となります。
大人の脈拍数は、通常、安静時で一分間に50~90回程度です。脈は心臓の規則正しい動きに合わせてトン、トンと規則的に拍を刻んでいます。運動しているときや、ストレスを感じているときなどは心拍数・脈拍数が増えますが、テンポアップするだけで、リズムは保たれています。脈拍が通常より極端に増えたり、極端に少なかったり、リズムが乱れたりする状態を不整脈と言います。

「不整脈」は様々な現れ方をします

  • 脈のリズムや速さに異常 
  • 脈の乱れ以外の症状
  • 症状がなくても検査で見つかる 
  • 息切れして苦しい
  • 全身がだるい 
  • めまいがする
  • 気を失いそう(失神)

期外収縮

一瞬の症状は誰にでも起きる普通のこと(期外収縮)。
不規則に生じ、一瞬で終わる脈の乱れは、多くの人に起きています。予期されるタイミング以外のところで心臓の収縮が起きるもので、期外収縮といわれています。多くは明らかな原因はありませんが、中には心臓の重要な危険信号の場合があるので、一度はきちんと調べた方がよいでしょう。

期外収縮の主な症状

  • ふいに喉がクッと詰まったような感じがする
  • 一瞬、せき込んでしまう
  • 心臓がドクンと飛び跳ねたような感じがする

期外収縮の中で注意すべき症状(なるべくすぐ受診ください)

  • 持続する症状や、めまい・失神を伴う
  • 安静にした状態で1分間の脈拍数が100回を超えていたり、逆に50回満たなかったりする
  • 脈が飛んだり、動悸を感じたりする症状の一つひとつは短時間で終わるものでも、一日何度も現れたり、以前より増えたように感じている
  • 息苦しくなって気が遠くなる

検脈の重要性

検脈とは聞きなれない言葉かもしれませんが、要は脈拍のチェックということ。不整脈の中には早期発見が望ましいものもあります。毎日の検脈が早期発見の鍵になります。
脳梗塞の原因となる心房細動は、放っておかない方が良い不整脈の代表格と言えます。放置しておけば脳梗塞や心不全となる場合があり、また整脈に戻りにくくなります。しかし早期の段階ではたまにしか起きず、一年に一度の健診では見逃されることがあります。
そこで大切なのが、毎日の検脈です。特に参考になるのは、自覚症状が現れた時の脈拍数や脈のリズムの様子です。慌てず脈をとり、異常があれば医療機関にかかりましょう。
検脈はご自身の手首の親指側(橈骨動脈)の拍動に反対側の指をあてて行います。最近は家庭血圧計やスマートホン、腕時計(アップルウォッチなど)に不整脈検知機能がついているものがあるので、毎日の検脈が苦手な場合はこれらで代替するのも良いでしょう。

自分の不整脈の種類を
確かめておこう

脈の速さやリズムに乱れがあると分かったら、どんなタイプの、なんという種類の不整脈なのかを確かめておくことが必要です。危険度が高いものなのか、どのような対応が必要なのかは、不整脈の種類によって大きく異なるためです。まずは循環器内科の受診をお勧めします。

不整脈外来で行うこと

  • 問診
    症状:どのような症状があるのか。起きやすい状況、頻度、程度。
    病歴:心臓の病気など、かかったことのある病気や治療中の病気があるか。これまで何らかの不整脈があると診断されたことがあるか。家族の病歴など。
    使用中の薬:現在、内服中の薬があれば、具体的な薬剤名。
  • 心電図検査:不整脈の有無、種類を知るために不可欠な検査。12誘導心電図、ホルター心電図、運動負荷心電。
  • 血圧測定/血液検査
  • 画像検査:心エコー、冠動脈CT、冠動脈造影

不整脈をキャッチできた時の心電図検査でわかること

  異常のありか 頻脈 頻脈徐脈 不規則
上室性不整脈 異常のありか心房
洞結節
房室結節
頻脈心房細動
心房粗動
発作性上室性頻拍
頻脈徐脈洞不全症候群
房室ブロック
不規則上室性期外収縮
心室性不整脈 異常のありか心室 頻脈心室頻拍
心室細動
  不規則心室性期外収縮

不整脈治療の手順

①もとになっている病気の治療

  • 心臓の病気(狭心症・心筋梗塞、心筋症、心不全、心臓弁膜症、心肥大)
  • 高血圧の治療
  • 甲状腺の病気の治療

②不整脈そのものを治療した方が良いか(治療した方が良いのは二つの場合)

  • 危険度が中から高レベルの不整脈(治療しなければ寿命を縮める可能性の高い場合)
  • 不整脈による症状が強く、つらい場合

③治療するとしたらどのような治療方法があるか

  • 薬物療法(頻脈を起こすタイプに検討可能)
  • 非薬物療法(カテーテルアブレーション、電気的除細動、ペースメーカー)

④生活習慣の改善

CAST研究

CAST(The Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)研究とは、急性心筋梗塞後に不整脈を合併する患者の突然死を飲み薬が予防する効果があるかどうかを調べた臨床研究です。具体的には、クラスI群(抗不整脈薬の種類)薬に著効を示した症例(1,550例)を2群に分け、一方に偽薬をもう一方に実薬を投与する無作為二重盲検試験を行いました。
しかし、10カ月後の中間検討で、実薬群の方が偽薬群より死亡率が高い(6.4%対2.2%)ことが判明し、この試験は中止となりました。
この臨床研究の報告以降は不整脈に対する薬物治療に対して安易に投与しない風潮となっています。

心房細動

心房細動は、臨床診療で遭遇するもっとも一般的な不整脈です。心房細動とは心房が十分な収縮をせず、けいれんするように細かく震える(異常な興奮が持続する)ことで脈が不規則になる病気です。このため動悸、息切れあるいは倦怠感などの自覚症状をきたします。
心房細動の有病率は年齢が進むにつれて上昇し、高齢化社会の日本では心房細動患者さんの数は増えています。

心房細動の4つの特徴

  • 年齢とともに起きやすくなる                     
  • 脳梗塞の原因となったり、心不全につながったりする恐れがある
  • 少しずつ進行していく  
  • 治療ができる

心房細動の症状

  • 疲労感
  • 脈拍の変化(弱い、不規則、はっきりせず数えずらい)
  • 動悸 
  • 息切れ
  • めまい、ふらつき 
  • 症状がない、健診などで初めて指摘

脳梗塞との関係

心房細動が起きると心房内で血液がうまく送り出せず血液がよどむようになります。よどんだ血液はかたまって血栓ができます。心房の片隅(心耳)にできた血栓はやがてはがれて、脳血管に詰まればその先へは血液が届かなくなり、脳神経細胞は壊死します(心源性脳梗塞)。心房でできた血栓は大きいので詰まる血管も太い部分、すなわち根本で詰まり、大きな梗塞巣となります(半身麻痺など)。脳梗塞の発症リスクは心不全(C)、高血圧(H)、高齢(75歳以上:A)、糖尿病(D)、過去に脳梗塞を起こしたか(S) の因子で評価されています。(CHADS2スコア)

心不全との関係

心房には自信の血液を絞り出して心室に血液を送る(atrial kick)機能がありますが、心房細動になるとその機能が低下し、心室の機能も低下します(心不全)。特に心拍数が多すぎたり、少なすぎた場合に多く発症します(心拍数の評価はHolter心電図で評価します)。

治療方針(心房細動とうまく付き合うか、心房細動自体を治すか)

  • 非薬物療法
    カテーテルアブレーション:心筋の一部をカテーテルで焼いて(焼灼)異常な電流の経路を断つ根本的な治療法。
  • 薬物療法
    リズムコントロール:抗不整脈薬を服用して、心拍を正常なリズムに取り戻す。
    レートコントロール:心拍数を抑える薬で動悸を減らす。
    抗凝固療法:血液を固まりにくくする薬で血栓ができるのを防ぐ(抗不整脈薬やアブレーション治療前後で併用します)。

長生きできるのはどっち?

  • 治療あり>無治療
    心房細動がある人の生存率は、心房細動がない人に比べ、低いことが分かっています。しかし適切な治療を受けていれば、心房細動がない人とほとんど変わりません。心房細動の発作が2度、3度と起きているようなら治療を始めましょう。
  • カテーテルアブレーション(で完治)>薬物療法
    心房細動が早期の段階なら、薬によるコントロールも有効です。しかし、薬は徐々に効きにくくなります。早めにカテーテルアブレーションを受けた人の方が、長生きする可能性は高いといえます。
  • レートコントロール=リズムコントロール
    薬物療法は、基本的には「つきあう」ための治療法です。どちらを選択しても予後は変わりません。

治療方針の決め方

  • 30~40歳代
    先の人生は長い。薬物を一生飲み続けるより、根治を目指す治療(カテーテルアブレーション)が勧められる。
  • 50~60(70)歳代
    自分の希望、心房細動以外の抱えている病気の有無などを考慮し、何を優先にするか決めましょう。 
  • 70(80)歳以上
    無理に根治を目指さず、脳梗塞の予防や症状の軽減をはかりながらつきあっていくことをお勧めします。

カテーテルアブレーション

心房細動を引き起こす異常な電気信号の多くは、左心房に通じる肺静脈内で生じます。そこから電気的な興奮が心房全体に広がることで、心房細動が起きてきます。
肺静脈内で異常な電気信号が発生しても、心房まで伝わらなければ心房細動は起きません。カテーテルアブレーションは、肺静脈から左心房への入り口周辺の組織を壊死させ、人為的にやけどの状態をつくることで電気の流れを断ち、絶縁状態にする治療方法です(肺静脈隔離術)。 

焼灼する器具:カテーテル(高周波)バルーン(クライオバルーン、ホットバルーン、レーザーバルーン)

カテーテルアブレーションの治療効果は、心房細動の進み具合によって異なります。発作性の段階なら、1回の治療で90%近くは根治します。
経過が長くても心房筋のダメージが少ない場合、2回、3回と繰り返しアブレーション(セッション)することで治まる場合もあります。
治療費は保険適応のある治療法なので高額医療費制度の対象になります。患者さんの所得に応じた限度額を超えた分の自己負担額は、還付が受けられます。手術時の差額ベット代、食費などは別途かかります。

治療に伴う危険性はゼロではありませんが、年々安全性は向上しています。ただし高齢者(75歳以上)や心不全が進行している人などは合併症が生じる危険性が比較的高く、無理に受けない方が良い場合もあります。
合併症にはカテーテル操作などで心臓の筋肉や血管が傷つき、心臓から血液が漏れ出し、心臓の周りにたまって心臓の拍動を妨げる心タンポナーデや治療の際にできた血栓や気泡が血管をふさぐ血栓塞栓症(脳梗塞など)、焼灼された組織が原因となって生じる心房頻拍や心房粗動(いずれも再アブレーションで治療可能)などがあります。