睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群イメージ

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは睡眠中に断続的に無呼吸を繰り返し、日中傾眠などの症状を呈する疾患の総称です。呼吸が止まってしばらくすると、苦しくなって目が覚める(中途覚醒)というサイクルを夜間に何回も繰り返します。このため息ができない「呼吸障害」と、良質な睡眠がとれない「睡眠障害」という二つの症状を併せ持っています。呼吸が止まる回数が多くなれば多くなるほどSASは重症化していきます。SASになると、眠っている間に、酸素が脳や血液に行きわたらず、様々な重大な合併症を引き起こします。

睡眠中にたびたび呼吸が止まってそのたびに呼吸を再開させるため脳が休めず、十分な睡眠がとれないため 日中の過度の眠気や倦怠感、不眠・中途覚醒、睡眠中の窒息感や喘ぎ呼吸、起床時の頭痛・頭重感 夜間頻尿などの症状が出現します。また日中の眠気に伴い集中力が低下し、健常な人より交通事故の発生率が高いとの報告があり(新幹線の運転手が停車ミスを起こした事象もありました)社会的にも関心の高い側面があります。

睡眠中に呼吸が止まってしまうSASでは呼吸再開の度に覚醒が起こり、交感神経の働きが高まります。このことが夜間の血圧だけでなく、日中の血圧上昇を伴い、高血圧の悪化につながります。このほか脳血管障害、虚血性心疾患、糖尿病、逆流性食道炎などの合併も報告されています。SASがあると、脳卒中になるリスクは約4倍、高血圧症や慢性心不全は約2倍になると言われています。また無治療のままSASを放置した男性(中等度以上)の8年後の生存率は、治療した人に比べると約63%まで低下するという報告もあります。
また重症の睡眠時無呼吸症候群では、心筋梗塞や心室性不整脈などの心血管疾患を合併し、突然死の頻度が高まると言われています。日本の追跡調査では、294名のSAS患者のうち約5年後に死亡したのは18名、そのうち心筋梗塞や脳梗塞による突然死は8名でした。このように循環器疾患(高血圧、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化)の原因として注目され、私も以前勤務していた病院では心臓カテーテル検査を受けられていた入院患者様全員に睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を施行していました。

睡眠時無呼吸症候群には大きく2つの機序があります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は首やのどの周りの脂肪、扁桃肥大、小さな顎、舌の付け根などが、気道を狭くする原因となって呼吸が出来なくなる病態です。SASの中で最も多く、いびきや日中の眠気が典型的な症状です。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は脳の呼吸をつかさどる中枢が異常をきたし呼吸の指令を出さなくなることから呼吸が止まる病態です。いびきの症状はありません。

睡眠時無呼吸症候群診断では、医師による問診後にスクリーニング検査を行います。当院でもパルスオキシメーター法+エアフローセンサー法でスクリーニングを施行しています(ご自宅で検査)。その検査の結果更なる精査が必要な場合は確定と重症度を診断するためのポリソムノグラフィー(PSG)を病院などで受けていただくよう紹介します。SASの検査には健康保険が適応されます。費用は3割負担の場合、簡易検査で3千円台、ポリソムノグラフィー(PSG)は入院費込みで3万円前後(3割負担)となります。

睡眠時無呼吸症候群の基本は生活習慣の改善です。またSASのうち閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療法として確立しているものとして、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)があります。CPAPはシリコン製マスクを鼻または鼻と口を覆うように取り付けて、装置からホース、マスクを通して、気道閉塞の程度に応じた空気圧を送り込んで気道を広げて、無呼吸を防ぎます。自宅で毎晩装着して眠ります。CPAP療法を続けることで、快適な睡眠をとることができ、SASによって引き起こされる合併症の発症や悪化を防ぐことが出来ます。

CPAP療法で重要なのは、長期的に継続してCPAPを使用することです。一般的には、装着を開始してから3か月たったころに効果を実感する方が多いようです。すぐ効果を感じないからと装着をあきらめてしまったり、毎晩装着するのが面倒になったり、自己中断したりする患者さんもいます。途中で治療を辞めてしまうと、さらに症状が悪化します。当院では治療開始後から月一回の定期受診時に、CPAPの不具合や装着状態のヒアリング、データーによる治療効果の確認を行います。そのときに不安や要望も相談いただいて継続いただけるよう支援しています。

夜間のいびきを指摘されたことがある、あるいは日中眠気を感じる方で以下の症状のある方はご相談下さい。

  1. ① 肥満がある。
  2. ② 高血圧や糖尿病、脂質異常症を指摘されたことがある。
  3. ③ 熟睡感がない。
  4. ④ 夜間頻尿がある。
  5. ⑤ 起床時に頭痛、頭重感がある。

当院でできること

  • 問診
  • スクリーニング検査(パルスオキシメーター法+エアフローセンサー法)
  • CPAP療法の管理

当院でできないこと
(病院へご紹介)

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の器質的病変の治療(耳鼻科的)
  • PSG検査