高血圧イメージ

最近の高血圧診療では厳格な血圧コントロールが求められています。2016年米国のSPRINT試験や2021年中国のSTEP試験では厳格な降圧管理の方が予後良好でした。これらを反映して私の大学院の指導教官であった、梅村 敏先生らが中心になって作られた 高血圧診療ガイドライン(JSH 2019) でも目標血圧値は75歳以下では家庭血圧値125/75mmHgを目標とするよう定められ、以前より降圧目標値が低く設定されています。

高血圧診療の難しさの一つに病状の評価があります。糖尿病の血糖値やHbA1C、脂質異常症のLDLコレステロール値などは直近の病状把握に有用です。一方血圧値は測定回ごとに変動があり、明確なカットオフラインを決めるのが難しいデーターです。当院では患者様にご家庭での血圧測定と血圧値の記録をお願いしています。測定ポイントが増えてくると血圧値の傾向が見えてきて、病状の把握が可能となります。

もう一つの難しさは高血圧自体に自覚症状がないことです。患者様は自覚症状がない故、コントロール不良でも様子を見てしまったり、血圧測定をしなくなることもあります。医療従事者も患者さまとのお付き合いが長くなると、コントロールが甘くなっていてもついつい容認してしまう状況になりがちです。このような状況はClinical inertia(臨床イナーシャ)と呼ばれ注意喚起されています。

私は厳格な血圧コントロールには正確な家庭血圧値の把握が必須条件と考えています。
患者様がしっかり家庭血圧を記録いただける方には厳格な血圧コントロールを行い、季節や寒暖などによって降圧剤の処方変更も考えていきます。また家庭血圧の記録が難しい患者様、動脈硬化に関わる他の基礎疾患がある方やご高齢の患者様には個々に適切な降圧値を設定し治療を行っていきます。